SPECIAL
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『ねらわれた学園』と『時をかける少女』
不思議な連鎖で繋がっていく両作の映像化
氷川:『ねらわれた学園』という作品は、僕らの世代にとって『時をかける少女』とカップリングになっているところがあります。70年代初頭、ちょうど中学生のころにNHKの〈少年ドラマドラマシリーズ〉で筒井康隆さんの小説『時をかける少女』を原作にした『タイム・トラベラー』、眉村卓さんの小説『ねらわれた学園』ともう1作(地獄の才能)を原作にした『未来からの挑戦』があった。80年代に入ると大林宣彦監督がその時代の旬な女優で両方とも映画化している。さらに、『時をかける少女』の原田知世さんはテレビドラマで『ねらわれた学園』を主演されてたり (笑)。それで00年代ではアニメ映画で細田守監督の『時をかける少女』があったから、今度の『ねらわれた学園』のアニメ化にもすごく納得感があります。常に寄り添ってきた2作なんです。
中村:僕は細田さんの『時かけ』があったから、今回の企画も成立したんだと思っているんですよ。アニメ業界の先輩が作った素晴らしい作品があったからこそ、後輩の僕らもこんな良い原作で映画をつくるチャンスに恵まれる。そこには素直に感謝したいです。
氷川:しかも『時かけ』はマッドハウスの製作でしたが、中村監督はそのマッドハウスの出身という、不思議な連鎖があるなと思いまして(笑)。
中村:そうですよね(笑)。当時はまだマッドハウスにいたので、横で『時かけ』が動いてるのを見てましたから。
氷川:しかも細田監督は原作をただアニメ化するのではなく原作を発展させた続編にして、ケータイメールとか現代のアイテムを入れた上で、ちょっとコメディ要素も入れている。そうしたスタンスにも近しいところを感じました。
中村:特に意識はしてなかったですけど、企画の在り方として近いものがある分、何かしら通じる部分はあるのかもしれないですね。
中高生が観ても楽しめるアニメーション サンライズとの企画の中で原作が決定
氷川:とはいえ、完成した作品自体は全然似てないんですよ。まぎれもなく、キラキラと輝く中村監督の青春映画になっています。中村さんとサンライズさんという組み合わせも意外でした。『ねらわれた学園』の企画自体はどちらから出たものだったんですか?
中村:僕は2010年の3月でマッドを辞めてフリーになりまして。それで、次の監督企画で何をやるか何社かのプロデューサーに連絡をとるわけですけど、サンライズ8スタの平山(理志・プロデューサー)君から提案されたのが『ねらわれた学園』で。いくつか候補があった中で一番最初に決まった企画で、縁があったんだと思います。
氷川:原作はジュブナイルの中から探していたんですか?
中村:いくつかのタイトルを検討したんですけど、サンライズの方針として中高生から観て楽しめるものにしたいと。『ねらわれた学園』はすごく上質なジュブナイル原作で、僕も子供の頃に読んで好きだったので、これならばぜひやりたいなと思いました。
ほかのどの作品にもキャラにも似てない作風
オーディションでキャラクターデザインを決定
氷川:映画の方向性に関して、こう描きたいというものはあらかじめ決めていたのでしょうか?
中村:青春ものにすることは、企画として最初から入っていた要素でしたね。ただ、今の時代に青春ものをつくるのって、ものすごく難しいんですよ。言葉にするとすぐに上滑りして、今の時代の空気の中ではシラけてしまう。だから言葉ではなくて、画面作りを含めた作品全体のテイストとして、僕なりに青春を表現することを考えました。難しいけれども、やりがいがあったと思います。素直で、まっすぐで、逃げない。今の時代の空気をわかった上で、それでも恥ずかしがらずに、傷つくことを恐れない作品でありたいと。僕にとってはそれが青春の表現だったんだと思います。ほとんど全てのスタッフが僕の希望で組んでもらったんですけど、唯一キャラクターデザインに関してだけは、オーディションで選びたいというのが製作側の意向で。それは企画の条件でもあって、何人かの方に描いて頂いて、細居(美恵子)さんに決まったんです。
氷川:ほかの作品のキャラと、似ているところが少ないと感じました。それでいてしっかりとアニメっぽいキャラと認識できるようになっている。このバランスが、すごくいいと思いました。
中村:ありがとうございます。デッサンとしての描き込みは抑え目にしつつ、デザイン的なシルエットや影の入り方で、重くならない軽快さを出せればと思いました。シャープな部分とやわらかい部分と、どちらの要素も生かしつつ、その調和が艶のあるハーモニーになるようなデザインでありたいなと。細居さんの絵には、それがあったと思います。